これまでは観音菩薩の像を中心にして、菩薩さまについて紹介しました。
先にも説明しましたように、菩薩とは、あくまでも仏さま(如来さま)の脇役(脇士)で、悟りを開かれた仏さまの世界に導いてくださる働きをされるのが、菩薩さまであります。例えば、観音菩薩は勢至菩薩とともに、阿弥陀如来の脇士で、阿弥陀如来のお立てになった極楽浄土に導く働きをされます。
この像は、薬師如来の像だと思います。
これからしばらく如来さまについて紹介したいと思いますので、まず、如来とは悟りを開かれた仏のことで、如(にょ)とは、真如(しんにょ)のことで、混じりけのない真実、嘘、偽りのない不偏の真理のことで、浄土の世界をいい、その世界から私たちを救うために「来た」仏のことを「如来」と言います。薬師如来、釈迦如来、大日如来等などです。
さて、この仏像は、手に「薬壺」(やっこ)、つまり、薬の壺を持っています。如来さまで物を持っている仏さまは、薬師如来さまだけです。
薬師如来さまは、病気で苦しむ人びとを、何とかして救いたいと、十二大願(12の願い)を立てられて、その願を成就されて、如来さまになられました。
「薬師さん」と呼ばれて、民衆に親しまれているのは、ただ単に民衆の病気を治すのみでなく、病気で苦しむ人びとに寄り添って、共に苦しみを共有してくださるからではないでしょか?